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最高裁判所第一小法廷 昭和24年(れ)1435号 判決

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人柴田秀雄弁護人池辺甚一郎の上告趣意について。

第一点 記録上所論のような昭和二三年五月一日附の書類が証拠書類として原審に提出されたことは認められないから、論旨は理由がない。

第二点 所論の書類は、何れも上申書であって旧刑訴三四〇条にいわゆる証拠書類には当らないばかりでなく、たとい証拠書類であるとしても公判廷で被告人の弁護機関である弁護人が提出し、裁判所及び検察官の閲覧を経た証拠書類については、特に必要のある場合を除くの外、必ずしもこれを被告人に読み聞かせ又は示してその意見弁解を求める必要のないことは判例の示すとおりである。論旨は理由がない。

第三点 証拠調の限度を定めることは、特別の事情のない限り事実審の裁量に委されている。所論憲法の規定は被告人側の申請にかかる証人は必要と否とのけじめなく、すべてを取調べなければならぬという趣旨のものでないことは、すでに判例において示されているとおりである。原審において所論のような違法があると認められないから、論旨は採るを得ない。

第四点 所論は、審理不尽を主張するが以上説明したとおりであって、別段原審の審理に欠けるところはないと認められる。論旨は採ることができない。

第五点 所論は、被告人は正犯でなく従犯だというのである。しかし、原審は被告人が外三名と共謀の上行ったものと認定したのであり、この事実は原判決の掲げる証拠によって認め得られる。そして、かかる場合共同正犯を認めることは判例の示すとおりである。

第六点 所論は、原審で弁護人が従犯であると主張したのに対し、原判決はその判断を遺脱した違法があるというのである。しかし、従犯であるとの主張は、共同正犯の起訴事実に対しては単なる否認の一種であって、旧刑訴三六〇条二項に定める主張に当らない。論旨は理由がない。

第七点 原判決は、共同正犯と認定したのであるから、従犯減軽をしないのは当然である。

第八点 相被告人の自白が証拠能力(他の補強証拠を必要とするが)を有することはすでに判例において示されたとおりである。それがいかなる程度に証拠価値を有するやは、各具体的場合に応じ裁判官の自由心証によって決せられる問題であるが、証拠能力を否定せんとする論旨は採ることを得ない。

第九点 所論は、結局量刑不当の主張であって、適法な上告理由とは認め難い。

被告人上野光蔵上告趣意について。

所論は、原判決の量刑不当を非難して寛大な判決を求めるというのであるが、法律審である最高裁判所に対してこの種の上告理由は法律上許されないのである。

よって旧刑訴四四六条に従い裁判官全員の一致した意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 真野 毅 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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